Life SUCKS but It's FUN

音楽、IT、サブカル、アイドル、その他思いつくまま好きなものだけ共有したい、ルサンチマンの雑記です。

思春期  エドヴァルド・ムンク

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江戸時代くらいまでの日本人の平均的な寿命は約50年くらいだそうだ。言い換えるなら、医療技術があまり発達していない状態、つまり我々人間は自然な環境だとせいぜい50年くらいしか生きられない生物である。ということになる。

そう考えると当時までの風習、15,6歳で結婚というのは理にかなっている。20歳前に子を授かり、40手前で子が独立し、10年ちょっとの余生を送る、というサイクルになる。

そしてその限りなく自然に近い人間という生物のサイクルに、男子特有の不可解な行動原理をあてはめてみると、意外にもぴたりと当てはまったりするのである。

13歳くらいで精通し、異性をエロい目で見始めると同時にだんだんと親をうざったく思い始める。挙句の果てになんの根拠もなしに、大人はみな馬鹿であり、自分のほうが優れていると勘違いし始める。

しかしこれらの感情は我々が自然に近い環境で生きていた時代において、親元を離れ、自立し、大人よりも働き、子を作るには、ごく自然かつ必要な心の衝動と変化なのである。

 

寿命がより長くなり、社会へ出るためのプロセスが複雑化し、より一層のモラトリアム期間が必要とされ、こういった男子特有の行動原理は黙殺されてしまうしかない現代の社会構造のほうが、むしろ自然ではないのかも知れない。

 

さて、ここで科学的になんの根拠もない僕の勝手な持論に長々と付き合って頂いた心優しき皆様はそろそろ疑問に思っておられるであろう。その話とムンクの少女をどう着地させるのだろうかと。

 

申し訳ない。どうも着地しないし、全く関係ないのだ。

というより全く関係がないと断定できるほどに、わかりやすい男子と比べてこの年頃の少女の心理は不可解なままなのである、と僕は異性として思う。

 

この少女は指のあたりに赤い血が見えるだとかを根拠に生理を迎えたばかりで不安がっている説があるのだけれど、ムンクはしばし肌色をこういう色使いで表すし、僕にはそれだけでなく、体の変化や性に対しての目覚めや、大人と子供の境界線への不安など、もっと複雑な心境にあるように見える。

 

少し前にこんな短編書いたのだけれども

 

jetsetloo.hatenablog.com

 

まぁ書いた本人が説明つけるのは非常にダサいのだけれども、小学生の「咲」が、母の友人の「僕」に対して好意はあるものの、父親でも、友人でも、異性としてでもなく、本人すらよくわからない様子が、例えば呼び捨てで呼んでほしかったり、例えば同級生の男の子を否定しようとしたり、または女の子らしさに腹を立てたり、と自分の立ち位置の不安定さを性別問題も交えながら書いてみたのだけれども、実はもっと良い作品がたった一枚の絵で表現されていたりする。

 

背景を見ていただくとお気づきかと思うのだけれども、彼女本人の写実的な手法にくらべて、枕とシーツの境界線すら曖昧で平べったく、無機質に描かれている。

僕は彼女という自我、本心、は実ははっきりしているのに、彼女が存在している世界にに自分を説明するすべがなく、捉えがたいくらいあいまいで周りは理解できかねることを表現しているのではないかと思っている。

 

逆に環境側からみると、この年頃の少女は複雑で、理解し難い行動に出るように思える、

 

例えばホラー映画では、エクソシストやキャリーなど、この年頃の少女を起用することで、妙な説得力が生まれていたりする。

ホラーでなくてもベティーブルー「37°2 le matin」はもっとストレートだ。

 

この少女が自分の周りの世界の輪郭をはっきりと描けるようになるまでは、あと数年必要なのかもしれない。