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音楽、IT、サブカル、アイドル、その他思いつくまま好きなものだけ共有したい、ルサンチマンの雑記です。

ノストラダムスの1999年の予言の恐怖の大王の正体を解明してみた。

ちょっと前に60年代の平和な日記を書いたついでに

1970年代に流行った世紀末思想のお話をちょこっと。

 

皆さんご存知だと思うんですけどもノストラダムスが1999年に地球が滅びると予言したとされる、例の詩。アレ、予言が外れたとか散々言われてますけど、そもそもノストラダムスって本当に地球が滅びるって言ってたんですかね?

 

この説を最初に言い出したのは五島勉氏。1970年代、各地で大気汚染やら、公害やら、自然災害やらがやたら報告されて時はまさに「滅亡ブーム」だった。そのブームに便乗して、いっちょ本でも書いてやれってことで当時日本ではほとんど知られていなかったノストラダムスの予言を五島勉氏は、少ない資料と直感で、てきとーに一冊にまとめてしまった。

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1973年発行「ノストラダムスの大予言

 

実際後年ノストラダムスの研究が広がった時点で、この本にあるノストラダムスの歴史的エピソードにでっち上げも混ざっており、これは一応彼の小説、という形で収束している。

 

どれくらいてきとーかと言うと、そもそも彼はノストラダムスの予言書「Les Centuries」を「諸世紀」と訳して紹介してる。おかげで実際にいまでも日本語では「諸世紀」で定着してるのだけれども、残念ながらこのフランス語の「Centuries」に英語のような「世紀」という意味はなく、ただ単に「100(たち)」って意味が正しい。ちなみにフランス語では Les Sièclesが諸世紀という意味になる。
だからこれは「百詩篇集」と訳すのが正しくて実際に百の予言詩が12巻にわたってつづられている。(足らないのもある) 

 

そして例の1999年の滅亡の予言とされる詩は第10巻の72番めにある。

 

L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois

Du ciel viendra un grand Roy d'effrayeur

Resusciter le grand Roy d'Angolmois.

Avant apres Mars regner par bon heur.

 

五島勉氏の翻訳

1999の年、7の月
空から恐怖の大王が降ってくるだろう
アンゴルモアの大王を復活させる為に
その前後の期間、マルスは幸福によって支配するであろう

 

 さて、この意味深な詩は一体どういう意味なのだろう?まずは正しく理解するために、当時のフランスとノストラダムスについて、正しく理解する必要がありそうだ。

 

ノストラダムス(Nostradamus, 1503年12月14日 - 1566年7月2日)は医学を学び、南仏でのペスト流行時には積極的に治療にあたった医師であった。

一方で占星術師としても本を執筆しており、1555年5月に初版が出された『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』はまたたく間にベストセラーとなり、わずか二ヶ月後の7月には国王アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスからの招待を受けている。

1564年には亡くなったアンリ2世の実子である国王シャルル9世より「常任侍医兼顧問」に任命された。

 

ここからはあくまで僕の意見だけど、今で言えば雑誌についてる「占い」程度だったその彼の予言が人々の間で大流行した理由として、当時、常に厄病やら戦争やら災害に悩まされていたフランスの人々の関心が、常に国家の未来の行方に向いていたからではないかと思う。

 

まとめると、ノストラダムスはフランスの不安な情勢を予知出来るかも知れないとされた、王室公認の占星術師であった、ということ。

その立場からもう一度、例の詩を紐解いてみよう。

 

L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois

一 千 一 百 九十九 七 月

 

例えば英語にした場合、Julyと書けばいいのにseven monthsみたいな言い回し、つまり本来ならば、7月はフランス語で「Juillet」のハズでsept moisにしたのはおかしい、という解釈者も多くいるのだけれども、単純に三行目の語尾「Angolmois」と韻を踏みたかっただけだと思う。

一行目、セプトモァ、三行目、アングーモァ

詩なんで。コレ。

 

Du ciel viendra un grand Roy d'effrayeur

空 やってくる 怯えさせる 大王

 

五島氏が「恐怖の」と翻訳した語尾の「effrayeur」という単語。実はフランス語にはないノストラダムスの造語なのだけれども、コレも四行目にある「bon heur」に合わせただけで、uを抜いた「effrayer=怯えさせる」説が有力。で、他動詞なので「恐怖の大王」ではなくて、そう言うのなら「恐怖させる大王」が正しい。

この大王とは何なのか?また誰を怯えさせるのか?は次の行に書いてある。

 

Resusciter le grand Roy d'Angolmois.

復活させる アングーモア の 大王

 

さて、当時のフランス人が「アンゴルモアの大王」と言われて思いつくのは一人しか居ない。ノストラダムスを王室へと招待したアンリ2世の父親、アング-モア地方出身のフランソワ1世その人である。

実際彼はアングーモアの王族であり、父はアングレーム伯(Comte d'Angoulême)という爵位も持っているので、オカルト的な発想を排除し、書かれた当時の民衆の感覚で考慮すると、名前にアングーモアと入ってしまっている以上、フランソワ1世で間違い無いだろう。

さて、戻って二行目の「怯えさせる」とはなんなのか。

国王フランソワ1世の統治時代は、軍事、外交上もフランス史上の画期となる戦争や外交事件が発生しており、とても平和とは呼べなかった。特に突然オスマン帝国と同盟を結び、大勢の犠牲者を出したことは民衆を大いに「怯えさせ」たのは間違いない。とにかく宗教改革に専念し、あまり評判は良くなかったらしい。

 

Avant apres Mars regner par bon heur

前 後 マルスが 統治 平和 によって

 

マルスとはなんなのか?これは一般的に言われている「軍神マルス」で良いと思う。軍神と聞くと怖いイメージだが、戦争続きの当時のフランスにとっての軍神はまさに勝利のシンボルであると言えそうだ。ではこのマルスとは誰なのか?

素直にフランソワ1世の後継なんだから、ノストラダムスを招待してくれたアンリ2世ではないかと思う。実際彼は馬上の槍試合で片目を怪我し後に亡くなっている、勇敢な王であった。

 

まとめと僕の意訳

 

1999年7月にも

空の王は民衆を怯えさせるために、

フランソワ1世のような王を復活させるが、

前後はアンリ2世のような軍神が平和に統治するだろう

 

どうだろう?

アンリ2世におべっかを使いながら、150年後のフランスはちょっと怪しい動きもあるけども、平和に繁栄してるよ、という内容だと僕は感じた。

 

当時のノストラダムスの立場を考えると、医師として人々に安心を与えつつ、また王室と親密な関係にあることから、不安な時代にフランスの未来を明るく提案することに主眼を置いていたのではないだろうか?

 

だからこそ民衆にも人気があったわけで、本当に王室に対し滅亡する未来を予言してたら、それこそ宗教裁判でぶっ殺されても不思議ではない時代だったはずだ。

 

まぁ、あくまでもこれは僕の解釈なので、皆さんお好きに楽しんで下さい。

 

ところでノストラダムスさん、予言集ばかりでなく

『化粧品とジャム論』というなんだかのんびりした本も出してます。

 

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けしょうひんとジャムろん  Le Traité des Fardements et des Confitures

 

この通りにジャムを作るとクソミソに甘かったり、髪の毛を脱色する方法にどう観ても硫酸と硝酸の混合液が紹介されていたりとあまり参考にならないっぽいですけどもね。笑

 

ではでは