Life SUCKS but It's FUN

音楽、IT、サブカル、アイドル、その他思いつくまま好きなものだけ共有したい、ルサンチマンの雑記です。

存在しなかった未来。レトロフューチャーとレイモンド・ローウィにとてつもなく憧れる。

 

少し前に一部で流行ったネットスラングに「ダサピンク現象」という言葉があります。

宇野ゆうかさんという方が発信源なんですけども、また「ピンク=ダサい」と誤解もされやすいスラングです。

 

ダサピンク現象とは、安易に女性向きならピンク色にすればいいんでしょ?と、本来の女性のニーズを理解もせずにデザインしてしまうような(主に会社の偉いおっさん)プロダクトは、総じてそもそものデザイン自体もダサい、というような意味だと認識してます。

 

f:id:jetsetloo:20181220063753j:plain

弱小ブログだから平気で晒すけど例えばこういうのとか。かわいいの?これ。やっぱり「女性用はピンク」みたいな安易なプロジェクトはそもそものデザインもあまり魅力無い気がするんですよね。どうですか?女性の皆さん。これ欲しくなる?

 

僕は根っからのAndroid派だけど、機能はともかく「持ちたい!!」って思わせる時点でiPhoneのデザインに到底及ばない。

 

ちなみに僕はRobin一択です。デザインが好き過ぎる。

f:id:jetsetloo:20181220064756j:plain

f:id:jetsetloo:20181220064805j:plain

f:id:jetsetloo:20181220064817j:plain

次買うとしたらINFOBARかも。

 

僕はグラフィックのデザイン専門なので工業デザインに関してはド素人だし、よくわからないんですけども、心理学的にも本来めちゃくちゃ重要なんですよ、デザインって。けれども日本の街をあるいてみても、結構疎かにされてませんか?デザインって。

 

こういう街よりも

f:id:jetsetloo:20181220065606j:plain

 

こういう街のほうが僕はウキウキしてお金を湯水のように使っちゃう自信ある。

f:id:jetsetloo:20181220065633j:plain

 

そりゃお前、外国だからだろ?って言われればそれはそうだけど、デザインに意識が込められているかどうかの問題だと僕は思う。

 

で。僕は60年代までのアメリカに凄く憧れるんですよね。産業革命以降、経済は右肩上がりで、70年代に公害問題などが表面化して世紀末思想が流行し、退廃的な雰囲気が流布されるまでは、誰もがリッチで不自由のない便利で素敵な経済の発展と未来を想像していた。(多分)

そういう「希望」のようなものが、デザインにも現れてるんですよね。

僕の大好きなデザイナー、レイモンド・ローウィなんか、特にそれを感じるんですよ。

 

f:id:jetsetloo:20181220070654j:plain

 アホでしょ。笑

この、機能とは一切関係ない、遊びのフリ幅がでかすぎる機関車。

f:id:jetsetloo:20181220070836j:plain


走るわけではないのに全く無意味な流線型の鉛筆削り。

 

f:id:jetsetloo:20181220071223j:plain

絶対ジェット積んでないから全く無駄なフロントグリル。

 

f:id:jetsetloo:20181220071941j:plain

絶対に効率の悪い彼の考えるオフィス。

 

けどなんか、見ているだけでもワクワクしませんか?僕はします。

 

f:id:jetsetloo:20181220071907j:plainf:id:jetsetloo:20181220072104j:plain

 

f:id:jetsetloo:20181220072124p:plainf:id:jetsetloo:20181220072241j:plain



ちなみに不二家のデザインも彼です。もともとフランスからアメリカに渡った人なんですけども、とにかくこんなので溢れかえっているアメリカの街を僕は歩いてみたかった。

 

 

で、仮にこのまま未来を迎えたらどうなっていたのか?というレトロフューチャーにも憧れます。

 

f:id:jetsetloo:20181220073325j:plain

 

いやちげぇ!!!!

なんかこえーよ。なに右の乗り物。おこなの?鼻ついてんじゃん。なんだよ「空想科学小説家」って職業。ちゃんと食えてんのか?

 

違くて。例えば2001年宇宙の旅のアートワークのような。

f:id:jetsetloo:20181220073938p:plain

 

で、ゲームの話で申し訳ないんだけど、「FALLOUT」シリーズがまさにレトロフューチャーで、設定のアートワークからしてこだわりまくっている。

f:id:jetsetloo:20181220080104j:plain

一応設定は2050年代の核戦争後の退廃した世界なんだけれども、何故か1950年代風のデザインが主軸なんですよね。

 

www.youtube.comああ。。。もう全てがカッコイイ。そもそもこのゲーム会社であるベセスダ・ソフトワークスの大ファンで、このシリーズも相当やりこんでるんですけどね。

ゲーム自体もかなり面白いので、未プレイの方は是非に。現在の最新版はFALLOUT76ですが、MMOなので4がオススメです。3はちょっと古いかも。

 

ちなみにイギリス版レトロフューチャー、「We Happy Few」も

f:id:jetsetloo:20181220081105p:plain


時計じかけのオレンジ風な世界観でなかなかのできの良さだったんですけども、ゲーム自体がただのお使いクエストばっかりで、操作性もイマイチでした。好きでしたけどね。

f:id:jetsetloo:20181220081138p:plain

 

ながながと書いたわりには、単に好きなものを羅列するだけ、という全く含蓄のない内容になってしまいましたが、今日はこの辺で!

 

ではでは

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.9【エピローグ】

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.8 - Life SUCKS but It's FUN

第九章:月満つれば則ち虧く

ふと振り返ってみると、子供の頃はカレンダーを見るのが楽しみだった記憶がある。そこには七夕や夏祭り、花火大会など、文字通り色とりどりのまだ見ぬ未来の出来事が綴られていた。そして、空白のスペースですら、自分自身の希望であり可能性でもあった。

30を過ぎて、僕らにとってのカレンダーはすっかり豊潤を失い、打ち合わせや法事といった灰色の予定で埋め尽くされ、空白のスペースはいづれ、こうした予定で埋まることしか想像できない代物となった。

そうして気がつけば、いかに効率よく行動するか、にだけ長けてしまい、その効率の良さから日々は光の速さで過ぎていってしまうのだ。

 

そうして、再び、ひとみと出会った夏になろうとしていた。彼女は、どう父親を説得してか、また僕と暮らすようになっていた。

それでも僕は、彼女に土日は家に帰るように、強く勧めていた。彼女になにか、欠けている部分があるとするのならば、それは僕では賄えるものではないことを、あの父親に会って、話して、僕は納得せざるを得なかったのだ。

 

陳腐な言い回しだが、離れてみてわかることもある。僕とひとみがまさにそうであったように、彼女と父親もそうであって欲しいと願った。

そうして実際にその通り、ある日彼女は「実家に帰ってお父さんと暮らす」事を決意した。僕にとって、一年間一人の女性を思うことはあまりにも短い期間であったが、彼女たちの時間軸にとって、一年間一人の男性を思うことは、十分に長い期間であるのだ。

そうして彼女のカレンダーの未来の空白は、また別の希望で埋め尽くされるのであろうし、僕がそれに介入するのは余りにも美しくない行為なのだ。

 

僕は笑顔でさようならを言ってひとみを送り出した。

 

数ヶ月がたった頃、ひとみから手紙が届いた。

父親に頼んで、今度はちゃんと卒業することを条件に、今は通信制の高校に通っているらしかった。美容師になりたいから、高校を出る必要があるのだそうだ。

 

僕は返事を書かなかった。何故ならそれは、ひとみが僕に手紙を送った行為が、僕になにかを求めて行った行為ではなく、あの父親の元、単純に、素直に、感謝を伝える為の、そして彼女が大人へと成長したが故の行為だったからだ。

 

僕はこうして、今でも時々、あの時の事を思い出す。だがそれは決して後悔や寂しさからではない。


僕が求めているのは思い出となった過去の時間ではなくて、あの日、あの時、空白となっていた僕らのカレンダーに、思い出となった過去の時間に、描いていた僕と、ひとみの、存在することのなかった未来なのかもしれない。

 

おわり。

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.8

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.7 - Life SUCKS but It's FUN

 

第八章:一葉落ちて

さて。

ここから僕が語らんとすることに対して、非常に筆が重たく、気が進まない。

だがしかし、かの喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉にもあるように、人生とは近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇なのである。それはある意味僕にとっては時間の経過が「遠く」を表しているのだろうし、この文面に出会った人からみれば、まさに客観性が「遠く」を表していると解釈しても差し支えないだろう。人は時間の経過と共にそれを許容し、笑顔で語れるという便利な本質を持っている、ということを信じ、ここからの執筆に取り掛かろうと思う。

 

ひとみがポツポツと語った話しによると、ひとみが通っていた子役育成の事務所には別宅があった。プロデューサーと名乗る「翼」という男が取り仕切っていたのだが、そこには高額な撮影機材と数十本にも及ぶ未成年女子の撮影データがあった。ひとみのような未成年者をスカウトし、芸能界デビューをちらつかせては、個人の趣味だから世間に出回ることはないと説得し、撮影した。見返りに「モデル料」として会社の経費で4万円程の金銭を手渡していた。

 

僕は生まれて初めて、人を殺してやりたいと思った。そいつの頭を粉々に砕くことを想像しながら、眠れない日々を過ごした。数日の間、僕はひとみを責めることはしなかったが、話しかけることも出来なかった。それはひとみに対しての制裁と捉えられても仕方のなかったことなのだが、自分自身の心の容量を遥かに超えた出来事に、どう振る舞えば良いのかすら、わからなかったのだ。泣きながら謝る彼女に、僕はなにも返せなかったのだ。

 

まことはもう、居ない。しほたちや同僚に言って、どうなるものでもない。僕は何を思ったのか、ひとみの母親に相談することにした。

 

「あの子ね、ほら。お父さん居なくて寂しかったのか、最初も随分と早かったのよ、わかるでしょ?男の人との、ね。だからあまり抵抗もしないで、少し我慢すれば、歌手になれるって思ってたんじゃないかしら?ね。ごめんなさいね。」

 

母親の言う通りだと僕も思っていたし、ひとみに対して僕は微塵も怒りを覚えて居なかった。少しの我慢。ひとみにとってはそうかもしれないが、僕のそいつへの我慢は限界を超えていた。

 

電話を切ってすぐに、また母親からの着信があった。

「ごめんなさいね。お父さんがぶん殴ってやるから今すぐ来いって言ってる。ひとみは返してもらうから連れてこいって」

この頃、ひとみの家族は埼玉に引っ越していた。夜の11時を回ったところだった。翌日も仕事はあったが、とりあえずひとみに事情を説明して急いで駅へと向かった。

 

ガランとした車内で、ここ数日僕と会話のなかったひとみは、うつ向いたまま僕から二つほど離れて座席に腰掛けていた。大きなバック二つは床にだらしなく置いたままだった。

一度だけ、もう一緒に居られないの?と消え入るような声で言った。

「当たり前だ。自分のしたことを考えろ。」

と、返事をすると、わっと、うつ向いたまま、まるでこの世界には自分しか居ないかのように辺りも気にせず泣き出した。

春先の、まだ冷たい鉄の大きなゆりかごの中でひとみの泣き声だけがこだましていた。彼女の実家までの距離は長かったが、電車が最寄り駅につく頃にはひとみも諦めていたのか、また電車に乗り込んだ時のように、ただただ、力なくうなだれて、ぽつんと座っていた。

 

駅からタクシーを拾い、マンションの部屋番号をインターフォンで押すと、場違いのように明るい、いつもの母親の声が答えてくれた。程なくドアがカチンと開くと、僕も、ひとみも、覚悟を決めてエレベーターに乗り込んだ。

 

初めて会うひとみの父親は、大柄で無愛想な男だった。終始無言で、形式的な進行は母親がよそよそしく務めてくれた。お茶を出してくれた音だけが聞こえたが、僕にはそれを確認する余裕すらなかった。

しばらく長い沈黙がながれたが、重たい口を父親がやっと開いた。

 

「オレもな、芸能界に居たから、ひとみがそんなことを願っていたと知っていたらまず反対してたはずだ」

 

父親の肩越しに壁にかけられた彼の若かった頃のレコード類が見えた。古い人間ならば誰もが知っているグループサウンズのレコードだ。ひとみは黙ったまま、僕の隣で正座をしていた。

 

「ひとみは今日で返してもらう。いいな?」

 

僕の決心はとっくに決まっていた。思い返せば、あのバレンタインの日から、決まっていたのだ。僕は、みっともなくも、情けなくも、なんの恥じらいもなく初めて、土下座を、した。

 

「お父さん!僕が付いていながら本当にすみませんでした!預かると約束しながらこんな結果になって申し訳ありません!どうかもう一度チャンスを下さい。もう、二度と、ひとみを不幸にさせません、約束します、僕はひとみと一緒に居たいんです。」

 

顔をあげた瞬間、バチンと平手打ちが飛んだ。だがそれは僕へではなく、父親からひとみへ、であった。

「お前は!!!こんなに思ってくれている青年に対してなんてことをしたんだ!!」

ひとみは大声で泣き出した。だがそれは意外にも平手打ちに対してでも、父親に対してでもなかった。

「だって、さっきは別れるって。なんで?なんで・・・」とまるで僕を責めるかのように泣きながら問いただした。

 

「そんなわけ無いだろう!ああでも言わなきゃわからないだろ!」

と、深夜の他人の家にもかかわらず、今度は僕がひとみを怒鳴りつけた。

 

・・・それから。母親はひとみを寝かせつけると、私ももう寝るわね、とリビングを後にした。

ひとみの父親は帰れない僕に、朝まで付き合ってくれた。音楽の話や芸能界の話、彼の仕事の話、僕の仕事の話。気がつけば始発の時間になっており、結果で言えば、ひとみはしばらく家族とまた暮らすことになり、土日だけ僕と会うことを許された形だった。

ただ、朝まで彼と話した印象で感じたことだが、その結果はむしろ、この一件に対しての制裁、というよりかは、彼がひとみの父親として、まだ、なにか心残りや、やり残したことがある、といった所なのであろうと僕は思った。

 

朝、眠たそうにひとみが玄関まで送ってくれた。

「どうしてくれんだよ、仕事できねーぞ」と笑って言う僕に、彼女は笑顔を見せてくれた。マンションの玄関を出ると、外はまだ薄暗かったが、なんだか妙に清々しい気持ちだった。ひとみと暮らせないのは寂しいが、それよりも僕は、あの、父親のことをずっと考えていた。生意気かもしれないが、到底勝てそうにもないライバルである彼に、今度は上手くやってほしいと、心から願っていた。

 

事務所の一件は、あの父親が「ぜってーに許さねぇ」と息巻いて居たので、なんだが僕の怒りは収まってしまった。むしろ翼とやらにこれから降りかかる不幸に同情すら覚えた。そこまで彼の計算だとしたら、もう僕の敵う相手ではないな、となんだか不思議な気持ちにすらなれた。

 

こうして僕とひとみの奇妙な生活は、ひとまず、幕を閉じたのだった。

 

つづく

 

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.9【エピローグ】 - Life SUCKS but It's FUN

 

www.jetsetloo.com

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.7

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.6 - Life SUCKS but It's FUN

 第七章:色は思案の外

それからの僕とひとみの恋人としての関係について、場合によっては一番興味を持たれる話かもしれないのだけれど、僕は恋愛に酔った勢いで自分の過去を綴っているのではなくむしろ、告解に近い事を行っていると思っているので申し訳ないとは思うが書くことがない。

ただ、これから終幕へと向かう僕らの関係の根幹を成す出来事は、2、3、説明しておく必要はあると思う。

 

まず、僕と離れている間に、ひとみは学校を辞めていたと言うこと。

それからひとみが急に帰ってきたのは、どうやらしほ達による根回しだったと言うこと。

最後に、まことはもう居ないということ。友人としての関係性の話ではなく、物理的にこの世にもう居ないのである。

 

結局の所、同世代であるしほ達の方が、ひとみの本当の気持ちを理解していたし、状況的にまことに代わる形で、僕の気持ちにも気づいていたのである。

ひとみが帰ってくる決心をした時点で、彼女たちは何も言わずに去っていったので、細かくはわからない。しほに再会するのはそれから随分たった後のことであったし、恐らく聞いてもとぼけるのであろう。そういう奴らなのだ。

 

当時の彼女たちの世代は、どこへ出かけるのも制服だった。制服が彼女らを一番可愛らしく魅せる事を理解していたし、なによりもお金のかからないファッションだったからだと思う。ひとみも例外ではなかった。僕のクローゼットから、しほのセーラー服をひっぱりだして、しほちゃんに借りて良いか聞いて?とせがまれて、一度だけしほと電話で話した記憶がある。

「ああ!むーちゃんちにあったのか!」

あったのか、じゃねーよ。お前ジャージ貸してって着替えて置きっぱなしだぞ。ジャージ返せよ、との僕の返事にゲラゲラ笑いながら

「いいよ!じゃあね」

と言って電話を切られた。どちらの「いいよ」なのかもわからなかったが、結局僕のジャージは返ってこなかったので、ひとみに対してなのだろう。それ以来しほのお下がりのセーラーは、中学も高校もブレザーだったひとみの、お気に入りの普段着となった。

 

ここからは思い出すだけでも胸が苦しいのだが、しかし僕らの本来あるべき姿へと回帰するためのエピローグへ向けて、包み隠さず話しておきたい。

 

ひとみは近所でバイトしながらも、歌手になりたいという夢を捨てきれてはいなかった。ある日、「子役募集」という芸能事務所の大手新聞広告の切れ端を持ってきて、応募していいか訪ねてきた。今でも耳にする事務所であったし、そういった世界にそう簡単にチャンスが転がっているわけでもないだろうと思っていた僕は、安易に、やってみれば?と返事をした。

 

何枚かの写真と簡単な経歴を送った結果は意外なものだった。ひとみが嬉しそうに見せてくれた返信の封筒の中には、即採用、二次審査不要、レッスン料免除、とあった。ひとみは、確かに可愛らしい女の子ではあったと思うが、俯瞰で観た場合ずば抜けて即戦力になる程ではないと思っていた。が、大手企業の大手新聞広告に、さほど疑問は持たず、その結果を僕とひとみは「運」の為せる業だと信じて喜んだ。

 

当時の僕らの生活は、僕とひとみが仕事帰りに待ち合わせをして、夕飯の食材の買い物をし、夜になると、えらくひとみを気に入っていた近所の美容師の女の子とその彼が家にあそびに来る、という平凡で楽しいものだった。ひとみも自分をかわいがってくれる姉と、兄が、同時に出来たようで大層喜んでいた。

 

ひとみも彼らにお返しがしたかったのであろう。四人で食事やカラオケに出かけるたびに、僕らの制止を遮って、徐々に自らお金を出すようになった。だが、やがてそれは、ひとみのバイト代で賄える金額を超えていることに、僕は気づいてしまった。

 

僕は彼女を問いただした。

想像するだけでもまるで、悪夢のような現実がそこにはあった。

 

つづく

 

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.8 - Life SUCKS but It's FUN

www.jetsetloo.com

米津玄師のノスタルジィ「恋はみずいろ」の誤解について少し

どうもです。

 

以前インタビューで読んだのですが米津玄師は「恋はみずいろ」が放送で流れるような徳島の港町で生まれ育ち、いつか自分もそんな美しい曲を作りたいと語っておりました。

 

で。ご存知無い方のために一応貼っておきますが、こんな曲です。

インストとしてはポール・モーリアが有名ですね。

 

恋はみずいろーポール・モーリア

www.youtube.com

歌ものとしては、ヴイッキー・レアンドロスがメジャー。一度は耳にしたことあるのではないでしょうか。ちなみに彼女はギリシャ人ですが、フランス語で歌っています。

 

恋は水色- Vicky Leandros

www.youtube.com

 米津は時折、徳島への郷愁からか、さまざまなキーワードやリズムを自身の歌の中に散りばめるのですが、「ホラ吹き猫野郎」という曲の中にもこんな歌詞が出てきます。

 

そんなこんな言う間に日が落ちて スチャラカどこ行く帰り道
恋は水色 鳴く蛙 豆腐のラッパ 声が遠く

 

 

米津の歌詞はその独自性から時折複雑だったり難解だったりするので、考察しすぎて曲解されることも多々あるんですけども、

 

 その推察で言えば、おそらく「恋=水色=ブルー=うまくいかない恋」と婉曲的に理解することができるため

 

という解釈を見つけたので少し恋はみずいろの誤解について書きたいと思います。というか、米津関係なく、この曲は誤解されやすい曲なので仕方ないのですが、

 

そもそもフランス語のブルー(Bleu-ブリュ)に、英語のような「憂鬱」という意味はありません。

 

恋はみずいろの歌詞をちゃんと追ってみれば一目瞭然なのですけども、

 

青い、青い、恋は青いわ
私のこころをやさしく揺らす
恋するこころを
青い、青い、恋は青いわ
空のように
あなたの目の中でたわむれる

 

これが1番で

灰色、灰色、恋は灰色
私のこころは泣くわ
あなたが行ってしまうと
灰色、灰色、恋は灰色
雨が降るの
あなたがここにいないと

 

これが二番。

 

もうおわかりだと思うんですけども、「恋はみずいろ」って自分の恋する気持ちの浮き沈みを空の色に例えた歌なんですね。

 

あなたが居ると青い空のように恋はみずいろ。

あなたが居ないと雨の空のように恋ははいいろ。

 

つまり恋はみずいろ、とは「うまくいかない恋」どころか、全く逆で、恋する幸せな気持ちを表していることがわかります。

 

まぁこだわりモンスターの米津玄師なら、恐らく知っていることでしょう。

 

ということで短いブログですが、例のごとく最後に僕の一番好きなヴァージョン、置いていきます。

 

 

CLAUDINE LONGET - love is blue

www.youtube.com

ソフトロックの名門、A&M Recordより

クロディーヌ・ロンジェはフランスからアメリカに渡った女優さんなんですけども、ささやくように歌った「メディテーション」がハーブ・アルパートを魅了して、その後歌手としても活躍します。ヘタウマが魅力的でレコードは全て買い漁りました。

 

ということで、ではでは

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.6

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.5 - Life SUCKS but It's FUN

 

第六章:月光ソナタ

事情のわからない出来事に慣れすぎていたのか、僕のひとみへの気持ちはその程度だったのか、今となってはわからない。わからないのだけれども、とにかく無感情のまま、母親に報告だけはしておいた。すみません、と何度も謝られたけれども、僕も謝られる理由もないので、なにかわかったら連絡下さい、とだけ伝えて電話を切った。

変な正義感から父親ごっこをし、紙切れ一枚で一瞬でも嬉しく思えた今日の自分があまりにも情けなかった。相変わらず同じ中学の仲間とつるんでいるまことに電話をしてみたが、流石に彼も何も知らなかった。元気出せよ、今から行ってやろうか?との申し出はありがたいが断った。

 

三日後に母親から電話が入った。ひとみは、カラオケのバイトで知り合った大学生の家に居るらしかった。

「もう…訳がわからないのよ、ごめんなさいね。」

と彼女は言ったが、僕はなんだか腑に落ちてしまった。父親を探し求める彼女の一面だけを僕も母親も観ていたのだが、彼女だって普通の女子高生だった。夢もあれば、恋もする、当たり前の話だった。僕とひとみの関係には、その二つが大きく欠けていたのだ。どこへも向かわない、恋人でもない僕との関係だけが彼女の人生ではないはずなのだから。

とりあえず、思いつきの行動だと思うから、むーさんどうする?と聞かれたので、扶養の件もそのままで、彼女の言葉を僕は待ってみます、と伝えて電話を切った。母親からしてみたら、驚くほど無感情だったと思うくらい、僕は冷静だった。

 

ひとみの居ない生活がしばらく続いた。同僚にそんな馬鹿な話を打ち明けられるわけもなく、仕事帰りも暇になってしまった。まこと、しほ達、ひとみ…。恐らく大人の僕と彼らでは、時間の流れは違うのであろう。僕にとってははあまりにも短期間に色々なことが通り過ぎていったのだけれども、彼らにはもっと、もっと。じっくりと考えるに値するほど、時間はゆっくりと流れていたに違いなかったのだろう。

 

ぼんやりとそんなことを考えながら、本当になんとなくいつもとは違う道を時間をかけて自転車を、ゆっくりと、ゆっくりと漕いでいたら、突然見覚えのある景色に出くわした。

 

ひとみと、じゃあね、と隠れるようにさよならをした、あの曲がり角。暗い夜道。月明かり。心もとない街灯。うっすらと浮かぶ彼女の笑顔。手を握りあって歩いたこの道。温かい季節、あんなに柔らかかった風景が、今は凍えるように冷たく、まるで自分の不甲斐ないこんな結果を責めるかのように、僕を迎えていた。

 

自転車を降りて、立ちすくんだ。涙が止まらなかった。大人になって本気で笑うこともなければ、けれども本気で泣くこともなかった僕が、こんなにも感情が抑えられないのだろうかと戸惑いながらも、しかし涙が止まることはなかった。

 

僕はひとみが好きだったんだ。そのおおよそ不釣り合いな恋愛に、僕はくだらない理由をつけてごまかして居ただけなんだ。悔やんでも遅すぎた結末に、僕は情けなくもただただ泣くことしか出来なかった。

 

なにかに引っ張られるような感覚を振り切りながら、僕は自転車に乗って家に向かった。うっすらとした月明かりにジュリエッタ・グッチャルディを思った。31歳のベートーヴェンが恋をした17歳の少女と彼女に捧げた月光ソナタ

今夜は何を食べよう、コンビニで何を買おう。そんないつもの日常すら考えられずに家についた。

 

「おせーよ!」

 

しほ達が、居た。

まことに聞いたのだろう。たまり場が自由になったと思ったらすぐにこれか。僕はなんだかわからない苛立たしさに、お前なんかに・・・とうっかり口に出した瞬間

「わかるよ!むーちゃん。わかってるよ!」

と真剣な顔で彼女は答えた。

しほは片親だった。母親は彼女を育てるためにスナックで働いていた。彼女が僕の家に来るようになったのはそれが原因の一つでもあった。残りの二人も似たような事情を抱えていた。ただ、底抜けに明るい彼女らの性格に僕は、それを忘れがちであった。

ひとみが、失った父親像を追い求めることが彼女の処世術であったのであれば、しほたちは、それでも底抜けに明るく生活することが処世術であったのだろう。

「ごめん」

いいよ、早く家入れてよ、さみーよ!との返事に、お前は相変わらず口悪いな、と言いながら鍵を開けた。

 

一通り事情を話したが、しほ達はだいたい事情は察していた。大人しく話を聴き終えたあと、

「むーちゃんさ、バカだよね。」と言い放った

「さっきからさ、ひとみちゃんがむーちゃんのことお父さん代わりに付き合ってたみたいに言ってるけどさ、ウチらがさ、男の家に行くって、好きだからしかナイじゃん、好きに種類なんてねーよ。好きは好きなんだよ。めんどくせぇ。ひとみちゃんが居なくなったのむーちゃんのせいじゃん。」

少し救われたような、嬉しい気持ちになったはものの、今更どうにも出来ないことを知って、その気持ちはまた萎んでしまった。しほはそんな僕を察してか

「なに?取り返したいなら調べてあげよっか?そいつの家」

あんまり乱暴な話するなよ、と笑って答えたが、本当は自信がなかったのだ。それはあくまでもしほの意見であって、ひとみがどう思ってたかなんて、情けない話だが僕にはわからなかった。

 

それから、週の半分は同僚や知り合ったお客さんとの付き合い、半分はしほたちと過ごす日々が続き、年も開けて、ひとみが居なくなって二ヶ月が過ぎようとしていた。

 

「はいこれ!」

と突然しほ達からチロルチョコをいくつかもらった。

なにこれ?と聞くとどうやら今日はバレンタインらしかった。いつも20円か30円しか持っていない彼女らからしたら、持ち金全部つぎ込んだチョコレートだった。心の底から嬉しかった。

「今日はいい日だな!」と感謝する間もなく、お菓子とジュースをせがまれた。呆れるほどそれが可笑しくて可笑しくて、みんなして笑った。

 

笑いながら家でゲームをしていると、一通のメールが入った。

ひとみからの短いメールだった。

「むーちゃん、渡したいものがあるんだけど今から行っていい?」

 

恥ずかしさを抑えながら控えめに、ひとみが今から来ることを伝えたが、彼女らにはお見通しだった。

「良かったじゃん!!!帰るわ!!!!」と3人に肩を何度も叩かれた。部屋は彼女らの食べかけのお菓子でちらかったままだった。相変わらず下品でだらしがない彼女たちに僕は、心からありがとうと言いたかった。

 

程なくして玄関のチャイムが鳴った。ひとみがまた、荷物を二つ、こんどは玄関先に置いたまま、そこに立っていた。前回と違い、その風景はまるで、自分が再び受け入れられるかどうか。不安な思いを抱いている彼女の心情を表しているようだった。

だがそれは、僕の勘違いであったのかもしれない。後ろに回した両手を前にもってくると、そこにはキチンとパッケージされたプレゼントの小箱があったのだ。

 

僕はそれで全てを察した。ごめん、ごめん、と何度も謝った。なんで謝るの?という彼女の言葉を、それでも遮って、僕は何度も謝った。

僕は彼女になにがあったのか、聞かなかったし、その後も聞くことはなかった。それは触れてはいけない部分に触れないようにしていたのではなくて、あえて言葉にする必要がなかったからだった。

 

僕とひとみはその日から、相変わらず親子のようではあったけれども、ちゃんとした恋人にもなった。書類はそのままだった。妻(内縁)の文字に、彼女はずっと笑っていたが、嬉しそうな笑顔だった。

 

だがもう一つ、彼女の叶えられていない夢、それがこの後、最大の事件を引き起こすことになるとは、僕は微塵も思っていなかった。

 

つづく

 

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.7 - Life SUCKS but It's FUN

www.jetsetloo.com

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.5

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.4 - Life SUCKS but It's FUN

 

第五章:鉛のような飯

それからのひとみは割と明るかった。僕は勝手に、目前の問題にある程度の見切りがついて安心しているのだと思っていた。僕はひとみがまだ子供だと決めつけていたし、ひとみにとっての僕は、親から面倒な部分を切り取った存在だろうと決めつけていた。

 

手術の準備のため、病院を訪れた雨の日の帰り道、僕の家へ向かうバスの中で、優先席に腰掛けながら妊婦のサインを指さして僕に許可を得るかのように微笑んだ彼女に愛想笑顔を返してみたりしたものの、彼女が帰ってから一人で食べる夕食は、鉛のような味がした。

 

一つの命と彼女の希望、僕は後者を優先させたのだ。

 

手術はあっけなく終わった。ある意味において、医者の「お父さん」という声かけに違和感はなく、淡々と説明を始める彼になぜだか怒りを覚えて殴りたくなる気持ちを抑えていた。

側に居てほしいと言われたまま、僕は彼女の手を握り、医者に告げられた麻酔の切れる時間まで彼女の顔を眺めていた。それからのことは覚えていない。何事もなかったのように努めて過ごすこと、恋人の誓いをたててみたものの、僕らは何も変わらなかったこと、その程度しか綴ることは、ない。

 

また再び、どんな未来へも向かわない、僕らの平穏な日々が続いた。季節は冬へと向かっていた。僕はこの一件で、一層ひとみの父親の事を思うようになっていた。正しくはひとみが彼を拒絶するたびに考えざるを得なかったのだ。

 

『本当のお父さんに逢いたい』口癖のようなそんな彼女の言葉についに僕は、君を捨てた男に、会ってどうする、今の父親がどれだけ思ってるか、どれだけ心配しているか、他人の子供を愛する勇気がどれだけのものか、何故わからない、と口汚く罵ってしまった。

それは子供を諭すという崇高な目的という箕を被った、僕の、汚い、どろどろとした、被害者的な、一方通行の、胃袋の一番奥から吐き出した、汚物でしかなかった。

 

彼女は二度と、その言葉を口にだすことはなかった。

 

ほんの数ヶ月前まで、僕らを包み込んでいた優しくも美しい世界にどこか物悲しさが漂っていた居たのを、僕は、凍てつくような冬の訪れのせいにした。寒さを理由に、家でなんとなく過ごすことが多かったある日のこと。ひとみを送ってからそろそろ寝ようかと思う時間に、突然家のチャイムが鳴り響いた。

 

制服姿のひとみが立っていた。手には大きな荷物が二つ。慌てて事情を聴こうと思う前に彼女は

今日から一緒に住む、と一言だけ言うと家に上がってベッドに座り込んだ。あまりにも事態が伝わらない。彼女はなにも応えない。僕は狭い家を飛び出すと、夜分すみません、とつまらない前置きをして、母親に電話で理由を聞いてみた。

 

「そうなのよ、一緒に住みたいんだって。お願いできるかしら?」

何を言っているんだろう。今の僕であるならば、子供は甘やかせば甘やかすほど、楽な道へ逃げてゆく生き物だと判断するだろう。それが正しいかどうか、モラルや秩序は別として、自分に許せるかどうかの話として。

確かに僕にも当時、彼女の言い分を真に受けて最大限に譲歩してしまうフシはあったのだが、彼女の母親は僕以上であった。家庭内の不和を日々目の当たりにしていれば当然かもしれないが、僕には理解し難いほどの方向性のズレた過保護であったと思った。

とりあえず、今日は預かりますが、電話で決めるようなことではないので、と翌日母親と会う約束をした。

家に戻るとひとみはベッドに入っていた。声を掛けても返事が虚ろだった。顔が火照っていた。手をおでこに当ててみると、熱が出ていた。看病をしながら、明日、お母さんと会ってくるね、悪いようにはしないから、少し帰りは遅くなるけど一人で大丈夫?と声をかけたら、小さく頷いて、そのままひとみは寝てしまった。

 

小さな喫茶店でお互いにコーヒーを頼んだ。

「お父さんはね、家を出るなら籍を入れろって言うのよ。でも私はそれで二十歳で失敗してるじゃない?お試し?じゃないけど、同棲からのほうがいいと思うのよ。むーさん、ひとみともう付き合ってるんでしょ?」

そうはそうなのだ。しかし、あんな事情があったから僕はひとみと付き合う事を決めたわけだし、父と子のような曖昧な関係が続いていることは母親には言えなかった。

それならば、と僕から提案した。

一緒に住むのであれば僕の家に住所を移さなければならないし、そうなった場合僕の扶養という形にしないといけないと思うので、住所移動に伴い健康保険のこともあるし、僕にそれくらいの責任は負わせてくれないだろうか?と言う所で彼女の母親と父親の言い分の中間で、なんとかこの一件を着地させてみた。

 

家に帰るとひとみはベッドから上半身だけ出して、おかえり、と引きつった笑顔で言ってくれた。顔はまだ火照っていた。何も食べたくないと言っていたのだけれども、ゼリーと一緒に「これ、懐かしいでしょ」と桃の飲料水を手渡した。とても話せる状態でもなさそうだったので、大丈夫、ちゃんと話してきたからね、大丈夫、とだけ伝えた。

 

翌日の午前中、母親に会って書類を受け取り、区役所へ向かった。中野区の区役所で続柄は?と聞かれた。

なんだろう。僕とひとみの関係は。と考えあぐねていた。

「養子ですか?違いますよね…」

はい

「平たく言えば彼女さんと同棲ということですよね」

そうなります、ただ、まだ子供なので僕が扶養する形を取りたいんです。

「でしたら、続柄は妻になります。籍は入れないのであくまで内縁になりますけども。書類にもそう書かれます。」

 

面を食らったが、それ以外の選択肢はなさそうであった。

書類の手続きが終わるのを待ちながら僕は、冬の寒空の下を行き交う人々を窓越しにみていた。

一年前まで、僕に女子高生の妻が出来ることなんか想像もしていなかった。いや、誰にも想像など出来ないだろうし、仮に誰かにそう言われたとしてもにわかには信じがたい話だと思う。ただ、一つ一つを順を追っていけば、少しづつ、少しづつ、歯車がややおかしな方向へ回りだし、だが自然にこんな結果を産むこともあるのだろうと、ぼんやりと、まだ自分の立場が理解できていない頭で考えていた。

寒さのせいで自然に早足で外を歩く人々にもきっと、そういった小さな歯車どうしの組み合わせが、いくつもの僕の知らないドラマを産んでいるのだろうと、僕は考えていた。

 

ひとみはどう思うだろうか?喜んでくれるのだろうか?そんなことを考えながら仕事を終えると、急いで家路へと向かった。

玄関を開けるとひとみは居なかった。どこへ出かけたんだろう?と思ったが部屋の様子がおかしなことに気がついた。

クローゼットを開けてみた。一昨日僕が掛けてあげたひとみの服は、しかし全て無くなっていた。引き出しも、机の中も確かめてみた。ひとみとひとみの荷物は全てなくなっていたのだ。

 

ひとみは風邪が治るとすぐに僕の家から出ていったのだった。

 

つづく

 

30歳。サラリーマン。ある日突然女子高生の妻をめとった話。Vol.6 - Life SUCKS but It's FUN

www.jetsetloo.com